こんにちは、NF-Xの古賀です。
Yahoo!プロモーション広告とYahoo!プレミアム広告が統合され、Yahoo!広告にリニューアルしました。
※この記事の画像はYahoo!広告 ディスプレイ広告 公式資料より引用しています。
引用元:https://marketing.yahoo.co.jp/service/yahooads_renewal.html
そのリニューアルの第一弾として「Yahoo!ディスプレイアドネットワーク」(YDN)が「Yahoo!広告 ディスプレイ広告(運用型)」(YDA)として2019年11月より順次提供されていました。
そして、2020年4月にはすべての代理店で、2020年7月からはすべてのアカウントでYDAへの移行が可能となりました。
すべてのアカウントでYDAが利用できるようになったので、YDNとの変更点から実際に運用して貯まった知見をもとにYDAのベストプラクティスをご紹介いたします。
ほんの一例ではありますがYDAの運用の参考にしていただければ幸いです。
目次
まずはYDNからYDAのリニューアルポイントの確認です。変わったのは上図に示す3点となります。
複数の広告サービスが統合され認知から継続まですべてのファネルのユーザーに対して柔軟に効果的なアプローチが可能になっています。
YDNだけでは難しかった認知層のユーザーにもYDAでは効果的に働きかけることができます。
またプレミアム広告はそのままディスプレイ広告(予約型)として使用可能です。(2020年秋ごろより順次提供開始予定)
YDAの管理画面では期間ごとの数値をグラフで比較して表示したり、直接レポートをダウンロードすることが可能になっています。
また入稿に関してもキャンペーンから広告作成までを1画面で完結できるようになりました。画像や動画のファイルも別画面に遷移することなく同一画面上でアップすることが可能です。
キャンペーン目的という項目が追加されており、成果の獲得やブランド認知など、プロモーションの目標に応じたキャンペーン目的を設定することができます。
キャンペーン目的の詳細は新たに追加された機能の章でご確認ください。
YDNでは一律クリック数(動画の場合は再生数)を最大化させるアルゴリズムでの広告配信が行われていましたが、ディスプレイ広告(運用型)では各キャンペーン目的に応じ最適なアルゴリズムでの広告配信が可能になっています。
これにより、クライアントのリスティング広告出稿目標をより的確に達成する運用が実現できます。
YDNからYDAへ移行することで下記の新機能を使用することが可能になります。
キャンペーン目的は下記の5つの中から選択でき、それぞれの最適化ポイントになっているアクション数を最大化します。
キャンペーン目的はあとから変更ができませんので注意が必要です。
また、キャンペーン目的により設定できる入札戦略、広告フォーマット、ターゲティング、課金ポイントが異なります。
下記の設定一覧をご参照ください。
YDNのインタレストカテゴリー機能では分割できなかった興味関心層と購買意向層を分割してターゲティングすることが可能になっています。
同じ新規配信を行う場合でも、リーチを更に拡大しサイト流入数を増やしたい場合には興味関心のターゲティング、新規ユーザーの中でも特に購買意向の強い(コンバージョンしやすい)ユーザーへのアプローチしたい場合には購買意向のターゲティングを設定すると効果的です。
自動入札の改善ポイントは下記の2つです。
・コンバージョンの蓄積が不要
・自動入札の学習ステータスが確認可能
YDNでは自動入札機能を使用するために15件のコンバージョンを蓄積する必要がありましたが、YDAでは0件からでも自動入札機能を使用可能になっています。
※ただし、より多くのコンバージョンを獲得した状態での利用が推奨されています。
また以前は見ることができなかった自動入札の学習状態についても管理画面上で確認可能になっています。
YDNではインプレッションベースのため、ユーザーに視認されていなくても1回とカウントされていましたが、YDAではビューアブル(視認範囲)ベースとなっているためユーザーの視認された広告のみカウントされます。
※視認されたとみなされる定義:広告の50%以上が1秒以上連続で表示されている状態
ここからはYahoo!が推奨する運用手法と実際に運用する中で得た知見をご紹介します。
上図はYDAでコンバージョン最大化に効果的な改善フローになります。
前章までに記載しているYDAのアルゴリズムを理解した上で、上図の4つのフェーズごとにチューニングを行う必要があります。
昨今リスティング広告全般で言われていることですが、アカウント構造はできる限りまとめることが重要です。(1コンテンツ=1広告グループ・1広告(1LP))
キャンペーンは予算で分ける必要がある場合以外はサービス内容・ターゲティングが異なる場合でも統合することが望ましく、キャンペーンの統合による運用上のデメリットはありません。(Yahoo!広告問い合わせ窓口より)
手動入札の場合、リストのリーセンシーを分けているものはグループを分けますが、自動入札の場合はリーセンシーをシグナルとして判別してくれるため、広告グループ(ユーザーリスト)もまとめることが推奨されています。
自動入札時のリーセンシーは過去のデータから成果の悪い期間を除いた最大日数が理想。(Yahoo!公式セミナーより)
※キャンペーンを分けるケース
配信面・ターゲティングなどで予算比率をクライアントから指定されている場合などはキャンペーンを分けて運用する場合があります。
・手動入札
YDAでは運用開始直後から自動入札を使用することが可能ですが、自動入札で最適な効果を得るためには広告グループ単位で月間(直近30日)50件程度(推奨は100件以上)のコンバージョンを蓄積することが望ましいと言われています。
・自動入札
YDAで自動入札を使用する場合、コンバージョン最適化が適用されます。キャンペーン目的を「サイト誘導」「動画再生」「ブランド認知」に設定している場合は自動入札は使用できません。
自動入札で安定して成果を獲得できるようになるまで30日前後の調整期間が必要です。
・リーチ最大化
最後は広告配信のリーチを最大化させ広告効果・コンバージョン獲得の最大化を図ります。
リーチ拡大のためにはリターゲティングはもちろん、サーチキーワードターゲティングも活用しましょう。またコンバージョンタグやサイトリターゲティングタグの設定が古いままになっているとITPの影響により正確に計測できていない恐れもありますので、この機会にタグの見直しも行いましょう。
広告効果を最大化するためには広告クリエイティブの改善を行いましょう。
クリエイティブ改善の際には「訴求ポイントの重複・抜け漏れの無いクリエイティブ作成」と「ターゲティング×クリエイティブ×ランディングページの関連性」を意識して行うと効果的です。
続いて私たちが実際に運用している案件で発生した事例をもとに洗い出したリスクと対応策をご紹介します。すべての案件に当てはまるものではありませんがご参考程度にご利用ください。
・YDN→YDA移行時のリスクと対応策
リスク | 対応策 |
テキスト広告の旧フォーマットは移行できない。(タイトル15文字、説明文33文字) | テキスト広告(説明文19・19)で作り直して移行する。 |
・アカウント再構築のリスクと対応策
リスク | 対応策 |
推奨のアカウント構造では、1キャンペーン内に目標CPAの異なるサービスが混在する。 | サービスごとに広告グループを作成し、グループごとに適切な目標CPAを設定する。 |
キャンペーン・広告グループを新規作成すると、以前の配信実績を引き継げない。 | 既存のキャンペーン・広告グループ内の設定を編集する。 |
デバイス別のURLが設定できない。 | どうしても出し分けが必要な場合は広告グループを分ける。 |
・自動入札のリスクと対応策
リスク | 対応策 |
コンバージョン実績がないと自動入札が安定しない。 | 推奨のアカウント構造に再構築しコンバージョンを集約する。
コンバージョンフローを見直し、マイクロコンバージョンを設定する。 |
予算キャップを回避するためなど、キャンペーン予算を必要以上に高く設定していると最適化が進まない。 | 1日に使用できる予算を設定し、コンバージョン数・CPAがついてきていれば予算を増額する。 |
曜日時間帯などの入札比率は自動入札では最適化されない。 | 広告グループ単位での入札価格調整率で調整を行う。 |
検証した案件の要件こちらになります。
月別推移
クリック数-クリック率の推移
コンバージョン数-コンバージョン率の推移
コンバージョン数-コンバージョン単価の推移
4-5月はYDNからYDAへ移行しました。
アルゴリズムに変化したことにより、表示回数・クリック数・コンバージョン数が増加、CPAが500円上昇しています。
CPA悪化の要因としてはブランドパネル、インフィードキャンペーンを分けた状態で移行しており、特にブランドパネルキャンペーンのボリュームが出なかったためと考えキャンペーンの統合を行いました。
移行前のブランドパネル、インフィードキャンペーンの成果が良好な場合は、それぞれの配信面を指定してキャンペーンを分けることで成果を安定させることができるかもしれません。
5-6月では入札戦略を手動入札から自動入札へと切り替えています。
また広告グループの統合も併せて実施しました。自動入札へ切り替え後はCPAを維持しつつコンバージョンが増加しました。
手動入札時と比較しコンバージョン獲得時間帯の偏りが少なくなっていました。
具体的には、0-6時の時間帯でのコンバージョン獲得が手動入札時は平均0.4件/時間に対して自動入札に変更後は1件/時間と2.5倍になっています。
CVRも向上したことから以前はコンバージョン獲得が少なかった時間帯も確度の高いユーザーへの配信ができていると考えられます。
※自動入札と各種入札比率調整の関係性についてYahoo!広告に問い合わせたところ「ディスプレイ広告の自動入札では時間帯やデバイス、地域等各種ターゲティングに対しての個別の調整は行いません。個別に手動で設定いただく必要がございます。」との回答をいただいたため、時間帯による偏りが少なくなったのはYDAのアルゴリズムの変化と自動入札との相乗効果と考えられます。
前月の推移
7月も自動入札での運用を継続しています。
メディアの影響を受けコンバージョンが一時的に急増しました。ピークが過ぎたあとも同様のコンバージョンを獲得するためクリックを取りにいく動きでしたが徐々にコンバージョンが獲得できない状態となり、結果CPAが悪化しています。
このことから自動入札設定時は、メディア効果にはキャンペーン予算を増額することで追従することができますがピークが過ぎたあとの抑えどころの判断が難しいと言えます。
今回はメディア露出当日に予算を増額しその後の抑制はせず様子を見た結果、クリック数・コンバージョンともにメディア露出時がピークとなりました。
その後は徐々に成果数クリック数が減少し、平常時のCVR・CPAに落ち着いたのは約2週間後の7/20の週に入ってからでした。
※2020年9月30日追記※
YDAで新たに配信可能となったスマートフォンブランドパネル枠の事例をご紹介いたします。
検証した案件の要件掲載結果は下記のとおりです。
まず、スマートフォンブランドパネルでは、CPM課金制となっております。
クリック課金の広告と比較するため、下記の計算式にてCPM・CPCを算出しております。
スマートフォンブランドパネルのCPC=コスト/クリック数
クリック課金のCPM=コスト/インプレッション×1000
スマートフォンブランドパネルと通常のディスプレイ広告を比較した結果、オーディエンスの確度に関係なくCPMは16~20倍、CPCは2.5~3倍クリック率は6~7倍高くなる傾向にありました。
一方、CVRはオーディエンスの影響を大きく受けており、確度の低いオーディエンス(TOPページで離脱したユーザー)では通常のディスプレイ広告と同程度のCVRとなりCPAは悪化しているのに対し、確度の高いオーディエンス(プロモーションLPや申込みページ到達ユーザー)では通常のディスプレイ広告の2倍以上のCVRとなっており、通常と同程度のCPAとなりました。
以上の結果から、スマートフォンブランドパネルはCPMは高くなるもののクリック率も高いため、広告予算にゆとりがあればブランドや商品の認知拡大に効果的な施策であると考えます。
また、配信するオーディエンスを見極めることでCVRを高めることができれば通常のディスプレイ広告と同等のCPAで成果の獲得も見込めることがわかりました。
YDNからYDAへ移行することでキャンペーンの広告掲載方式による配信面の垣根がなくなり、設定しているクリエイティブが最もパフォーマンスを発揮できる面に配信されるため、表示回数・クリック数が増加します。
また、アルゴリズムが流入数の最大化からコンバージョンの最大化へと変化しているため、より確度の高いユーザーへ広告が配信され、コンバージョン率が増加しました。
自動入札についても、クリック率・コンバージョン率が向上していることから、より確度の高いユーザーへ配信ができており、結果としてCPAを維持したままコンバージョンを増加することができています。
ただし、自動入札で突発的なコンバージョン増加が起こると、その後のCPAが悪化する恐れがあるため判断ポイントの見極めが重要になります。
こちらについては今後の課題として、実運用の中で判断材料として使える指標の変化などを見つけ記事として皆様にお伝えしていければと考えております。
YDAの管理画面を使うことで掲載結果の変化を可視化でき、今まで以上に確認しやすく操作性も向上したと感じます。
YDAの新しいアルゴリズムに期待しつつ運用実績データは都度更新してまいります。
更新情報は、Twitter・Instagramでお知らせします。ページ下部にリンクを設置しておりますので是非フォローもよろしくお願いします。
以上、最後までお付き合いいただきありがとうございました。